映画


2001年3月
3/3(土) 「グリーン・デスティニー」 監督アン・リー
日比谷スカラ座


忘れた頃にこの映画

去年公開してたときにも見たいとは思ってたんだけど、あっという間に公開が終わってしまってついつい見逃してしまった。「初恋のきた道」でチャン・ツィイーにやられて以来、見ておくんだったと後悔していたが、ラッキーなことに全米ヒットを受けて再公開してくれた。ここの映画館はけっこうでかく、スクリーンもでかいサイズだったので迫力もそこなわれて無くてうれしかった。

さて期待のチャン・ツィーは今作ではどっかむっとしたような顔が多い役柄なので、「初恋・・・」のようなかわいらしい笑顔はほとんど見れなかった。やっぱりこの人は笑った顔が一番。

映画自体は期待したほどではなかったような。

どうもチャン・ツィーが出すぎてて、話のバランスまで壊してるみたい。特にイェン(チャン・ツィイー)とローのエピソードを詳しく描きすぎでは?チョウ・ユンファが自分のせいでもないのにかすんじゃってるよ〜。

そうそうロー役のチャン・チェンってかっこいいね。日本でも人気出そう。ウォン・カーワァイの映画に出てるみたいね。

ま、でも最後はきっちり泣かせてましたねぇ。ラストはよかった。ミシェル・ヨー地味ながらかっこよし。
空中浮遊のチャン・ツィイーの表情は良かったね。

3/10(土) 「スナッチ」 監督ガイ・リッチー
新宿アカデミー?


すぐわかるねぇ。「ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」の監督だって。

結構前作と似てるとこあるね。なんていうか「パルプ・フィクション」みたいに、独立した複数の舞台設定のものが何かを仲介にしてからまるってあたり。あの車のシーンなんか独壇場って感じだったね。

オープニングの見せ方からしてクールの一言に尽きる。登場人部のキャラの性格付けがいちいち手がこんでる。ただちょっと人が多すぎて人間関係がわかりづらかったけどね。

ま、ぶっちゃけて言っちゃうと前の「ロック・ストック・・・・」の方が好きだな。今回は前ほどのアクションも無かったし、前のようにスクリーンに向かって何百回つっこみをいれたかわからんような強引な設定も無かった。前作に比べるとこれでも中途半端ってところか。こういう性格付けの映画だとどれだけ極端な設定するかが勝負だね。

なんかこうやって見てると「PARTY7」なんかもけっこうこの監督の影響あるような気がするな。
そうそうあの86カラットのダイヤのちょ〜うそ臭そうなやつをみんなが必死になって奪い合ってるのが笑えた。やっぱこの監督、笑いのつぼを心得ていらっしゃる。

ダニー・ボイルよりは今後の展開が期待できそうな監督だよな。次も楽しみ〜

3/10(土) 「EUREKA」 監督青山真治
テアトル新宿

もっととんがった作品だと思ってた。カンヌの賞をとってたし、なんとなく。でも違った。
これはとても静かでとても痛々しい作品。肉体的で無く、そう精神的に。

北九州で起きたとあるバスジャック事件。これが全ての発端だ。犯人は6人殺して射殺された。運転手沢井真(役所広司)と幼い兄妹2人(梢、直樹)が生き残った。

この事件がもとで生き残った3人の人生が狂いだす。運転手はその後、客は死んで自分が生き残ったという批判や自責の念で、運転手をやめる。そして一時的に失踪する。子供達はもっと悲惨で、両親がこの事件をきっかけにうまくいかなくなり妻が家出。夫はその後自動車事故で死亡。2人だけが残される。

こうやって事件の生き残り3人は心に深いトラウマをかかえ、沢井はいつしか兄妹2人が学校にも行かず生活している家を訪ね、一緒に生活を始める。前後して子供達の従兄弟という秋彦もあらわれ4人での不思議な共同生活が始まる。

子供達は全く口をきかない。ただ沢井の心の優しさに触れ梢は少しずつ心を開きだす。だが通り魔事件が頻発するようになり、精神的に問題があるとされる沢井に嫌疑がかかる。また秋彦にとって沢井の行動は理解できず、ときどき衝突している。

いろいろなことが悪いほうへ流れているとみた沢井は一台の中古バスを調達してきて中にベッドをつけるなどして改造。なかば強引に3人を旅へと連れ出す。

前半は心理劇。後半はロードムービーといった感じかな。全体を通じて心の痛みがひりひりと伝わってくる。直樹のかかえる心の闇。そして秋彦がまきちらす毒。

「サンデイ・ドライブ」や「タイムレスメロディ」を思い出した。この独特の間はスキマを埋め尽くすような西洋映画では表現できまい。色即是空。空っぽの空間を上手く利用するのが日本映画の強みのような気がするな。

あ〜でも4時間弱ってのは一大スペクタクル歴史ロマンじゃないんだし、内容にしては長すぎ。もうちょっと短くする努力は要るでしょう。

3/18(日) 「サトラレ・TRIBUTE to a SAD GENIUS」 監督本広克行
新宿ビレッジ

雨模様のせいもあったのか初日だというのにやたらと空いていた。それだけでわけも意味も無く不安な気持ちになる。

「サトラレ」とは自分の心が、しゃべらなくても周りの人々に「悟られ」てしまう不思議な能力を持つ人々のこと。現在日本では7人しかいないらしい。本音が全部周りの人に筒抜けという恐ろしい能力だ。

今作品では監督自身「泣ける映画にした」と公言してはばからない。これ自体は最近の邦画にやたらと多い、感動強制型の作品群に対して「自分から先に言っちゃう」っていうある意味開き直りのようなやり方で一線を画してるんだろうとも思うけど、やり方としてはあんまりいいとは思わないな。

まぁそれはおいといて、この作品ほんとに泣けるのかと言うと確かにかなり泣ける。さすが自信を持っていうだけのことはある。悪く言うと相当かなり徹底的にあざといつくりだ。さぁ泣けと言わんばかり。

そもそも初期設定がすでにかなり強引な話を無理やり形にしてるところがすごい。だから冷静に考えるとおかしなところがいっぱいあるけれどもそういうの指摘して議論する類の映画でもないからそこはそういうもんだと納得する。

ずっと見ていて、ストーリー的にとある劇団の作品に性質が似てると思った。そうキャラメルボックスだ。

どっちもやたらと純粋な作りだ。主演の安藤政信(里見健一)、バトルロワイヤルの殺人鬼とはうってかわって優しい青年役。しかし何やらしても器用だね。もうちょっと悪役をこなすようになれば日本のショーン・ペンだな。

いろいろ目に付く点も多いけど、暖かく泣ける映画というなら今春一番じゃないかな?寺尾聡(漢字出ず)の演技が良かった。あと最近スクリーンでもよく見かける松重豊の演技はさすが。八千草薫の存在感はピカイチ。あとは安藤君の絶叫ですね。

自分の居場所を探して、自分が生まれてここにいる理由を求めて。サトラレの苦悩は実はみんな一人一人の問題なのかもしれないね。あんながらがらの状況で終わらせていい映画じゃないね。皆さん見に行きましょう。

3/18(日) 「ギター弾きの恋」 監督ウディ・アレン
恵比寿ガーデンシネマ

前評判が良かったので、十分に注意して会場に行ったが、思ったほど混んでるふうでも無いみたい。もちろん満席ではあったけどね。

ストーリーはわりとシンプル。ギターの腕はめっぽういいんだけど自分中心でエゴイスト、浪費家で女癖悪しのエメット・レイ(ショーン・ペン)がある日海辺でナンパした女性は実は口がきけず、頭も少し弱かった。最初は「はずれをひいた」とうんざりしていたエメットだったが、次第に女性の一途でやさしい性格に情が移ってしまい、一緒に旅を続けることになる。しかしだからといってエメットの破滅的な生活が治るわけでも無かった・・・・

ウディ・アレンはそれほど好きでは無い。今まで映画館で見たのは「誘惑のアフロディーテ」ぐらいかな。あの時も、よく出来てると思ったけど、自分にしっくりきたわけでは無かった。今作も正直言うと中盤の展開がけっこう平板で、途中何度も座りなおしてしまった。(僕が面白くない映画見てるときによくやるクセ)

ストーリー的にはあんまり目新しいものが無いんだよね。映画じゃいかにもありそうな話で。
でも主演のショーン・ペンとエメットに思いをささげるハッティを演ったサマンサ・モートンはすばらしい。特にサマンサはいい。口のきけない女性の一途な思いは見てる方にもひしひしと伝わってきた。

ラストはねぇ、とある昔の名作に激似。でもだからといってこの作品が悪いわけじゃない。これはこれでとてもよく出来てる。最後をきっちりしめることで途中のたるみも含めて作品が引き締まる。こういうシンプルな作品のお手本みたいな作品だ。

まぁ、合わないと思いつつも、やっぱりこの人はすごいですね。すでに次作も本国では公開されているというし、ウディさんあいかわらず健在だね。

3/31(日) 「火垂」 監督河瀬直美
テアトル新宿 
今日は寒かった。とても寒かった。雪が舞っていた。
”東大寺二月堂の修二会(お水取り)の業が終わると、春が来る”
季節がシンクロしていた。

今まで何度と無く見る機会を逸していた河瀬監督作品。これが初めてだ。

火垂。いわゆる蛍じゃない。火がこの作品では重要な役割を果たしているのだ。
修二会の松明の火。若草山の山焼き。大司の窯の燃える火。あやこが故郷の坂出で燃やした火。
ポイントで差し挟まれる古都奈良の伝統行事。それとともにくりひろげられるあやこと大司の恋。
あやこが幼い頃母親が服毒自殺。その母に代わってあやこを育てたのがストリッパーの恭子。恭子とあやこの母子のような関係はあやこが大人になった今でも続いている。あやこもまたストリッパーとして生きていた。だが母の死に、また自分の過去の過ちに苦しみ自暴自棄な生活を送っていた。

大司もまた一人。陶芸家としての自分の進む道を定めてはいたが、ただ一人の肉親祖父に死なれ、心に空虚なものを感じていた。

最初はなんだかリズム感も悪く、今ひとつとりつきにくい感じだったものの二人が出会ったあたりから、流れが良くなる。

自分が抑制できない。すぐにヒステリックに叫んでしまうあやこ。そしてそんなあやこを包み込む大司。
二人の周りの人が死んでいく。限りない喪失感を積み上げた後に・・・・
時間のわりに恭子の描き方がイマイチ足りなかったのが不満かな。基本は3人の関係だと思ったのに、恭子は単なる脇役にしか感じられなかった。あの駅前のシーンは良かったけど。

奈良の風景、美しい。絶対京都よりいいよ。京都は人が多すぎるもん。この映画を見てたら奈良をまわりたくなってきた。時間があればじっくり歩いてまわってみたい。

4/14(土) 「花様年華」 監督ウォン・カーワァイ
Bunkamuraル・シネマ

きれいな映画だった。第一印象はそれ。

「恋する惑星」の頃のウォン・カーワァイといえば疾走感を全面に出した、あの画面が流れるような独特のカメラワークが印象的だったけど、さすがに時間も経ってずいぶん変わってきたという印象。

今回はなんつっても大人。トニーもマギーもすっかりいい大人の男女だ。特にマギー・チャン。予告編の断片ではちょっとおばさんっぽい印象の女優だとか思ってたけどとんでもない。美しいのだ。とにかく。物憂げにふらふら歩いてるだけで妖しいほどの魅力。

ストーリー自体は大したこと無い。かなり淡白。でもそれを補ってあまりある、映像の美しさとセンスの良さ。60年代の香港に行ってみたいようなそんな気分にさせる。しかしチャイナドレスの女性ってなんであんなにきれい?ウォンさん実はチャイナドレスフェチなんじゃない?

まぁ、話はちょっと退屈だった。もともとアンニュイな雰囲気が全面にただよってるので、余計に眠くなる。

今作は賛否両論みたいだけど僕はどうかな?けっこういいと思うよ。突き抜けてはいないけど。
 

6/10(日) 「ショコラ」 監督ラッセ・ハルストレム
渋谷松竹セントラル

げ!!2ヶ月も空いてる。間にごっつい寝た「ミリオンダラーホテル」があるにしてもだ。これはいかん。

これは良かった。まぁハルストレム監督作品はもともと好きだし、どういう作風の人かもわかってるので、その下地をもって見たからってのもあるけど。

素敵な童話だよね。ジュリエット・ビノシュも大人のおちついた母親が板についてるし(役は落ち着いてないけど)特にこれって言う人はいないけどみんなしっかりした演技だし。まぁやっぱりジュディ・デンチおばあちゃんの演技が一番かな?ジョニー・デップはあいかわらずおいしいとこを持っていってるな。

どこをとりあげてああだこうだと言う前に、おだやかで心の優しくなれる一品。世の中こういう作品ばかりだと退屈だけど、だからといってこういう作品はいつの時代にも必要なんだろうなぁ。堅いこと言いっこなし、みんなでヴィアンヌのチョコレートの魔力に引き込まれましょう。

6/17(日) 「みんなの家」 監督三谷幸喜
渋東シネタワー

演劇に続いて三谷作品2本目。今日は三谷デーだな。
すごいおもしろかったよ。腹抱えて笑った。こりゃ傑作だよ。

これはほんとに最近の三谷演劇作品をそのまま映画に持ってきた感じ。演劇だってもともと即興性より、かっちり話を作ってきっちりネタをしこんでって感じのが多いし、映画だと一層その傾向が強いよね。でももちろんそれがつまんないんじゃんくて、細かいトコまで計算しつくされた実に見事な出来栄え。

田中邦衛さんは評判どおりおいしいところを全部持って行ってるし、唐沢君はそれにがんばって張り合ってて緊張感あるし、田中直樹のあのちょっと情けないキャラ設定はもちろん正解だし、八木亜希子のキャラはもろ三谷幸喜のイメージなんだろうなぁ。

おっとぉ遊機械の白井さんも忘れちゃいけませんね、あの変てこりんなキャラを控えめに見事に演じてるのはさすが白井さんでした。

しかし改めて一人一人のキャラに細かい設定がされていて、やっぱこの人相当な完全主義者だと思う。この笑いが外人に理解されるかどうかわからんけど、ほんとにオスカーあげたいくらい。見事ですよ。
そうねぇ、唯一ちょっとだけ気になったのは八木さんの演技にときどき素人っぽいとこがあったぐらいかな。まぁ周りが上手過ぎるし、監督じきじきの要請じゃしょうがないかな。それにキャラとしてはカンペキに近いです。それで相殺かな。

この手の作品って数こなしていくとだんだんみんなに飽きられちゃうようなとこはあるし、その先は三谷さんに期待なんだけど、でもとりあえず監督2作目にしてこの出来。はっきり言ってすごいです。

7/8(日)「A.I.」 監督スティーブン・スピルバーグ
東急文化会館

驚く無かれ、実はスピルバーグ監督作品を映画館で見るのはこれが初めてなのだ。

何故か?ありていに言えば好きではなかったということだ。いや、嫌いというわけでは無い。ただあのなんでも器用に、それでいて毒が無い作品群にどうも合わなかっただけだ。だがまぁ食わず嫌いは何でも良くない。それにそこまでガンコにこだわってるわけでもない。たまたまっていう要素も強いのだ。

さて、この作品。作りは大味な印象。スピルバーグってこんなにまとまりの無い作り方する人だったっけ?って思うぐらい散漫な印象。2時間ちょっとの枠の中で扱うにはあまりにもテーマが大きすぎたのだろうか?確かに難しいテーマなんだけど、どうも細かいところを描ききれず単にスジをおっている感じで、だからどうも一つ一つの行動にそこまでの必然性が薄い感じがする。

愛をもって生まれたディビッド、そして愛を持って生まれたがゆえに起こる悲劇。愛する者に拒まれそれでも愛する者を追いつづける。人間でない彼には決して諦めることが出来ない。そうプログラミングされてしまったばかりに。

なんとも痛々しいラストだ。正直だらだら来たなと思ったラストだが、やはりポイントはきっちりおさえている。なんとも切ない。この作品、確かに未来社会の壮大なスケールだが、本質はやはり素朴な親子愛にあるんだろうと思う。

人類の機械文明に対する功罪など批判してもしょうがないだろう。起こるべきことは起こるのだ。いいか悪いかなんてわからない。なんであれ人が選んだ道が現実なのだから。この作品では安易なヒューマニズムなどみじんも感じられなかった。この突き放したような描き方は正解。これはベースがキューブリックだからか?いやそのへんはスピルバーグとて十分意識していたところだろう。2000年後の世界。あれは真実に近いような気がする。

デイビッド役のハーレイ君はやはりはまり役。あの悲しそうな目がドンズバです。でもその上を行ってたのが、ご存知ジュード・ロウ。動きの一つ一つまで最高でござんしたよ。

8月9日(木)「こころの湯」 監督:チャン・ヤン
日比谷シネ・シャンテ

優しい映画だった。これぞ癒し系の作品だ。中国でもこういうのがあるとは思わなかった。
キャラを日本人に置き換えればそのまま日本映画のスタンダードとでも言うべき作品がができそうだ。

また、日本の癒し系に多い、ゆったりしていて単調で眠い・・・という要素は無く、スピーディに話が進んでいくのだがなぜかほっとするという、ここらあたりは日本人のちょっと勘違いしている映画監督さんに勉強してもらいたい気がする。

古い銭湯を舞台に、年とったオヤジと息子2人を中心とした話だけど、やはりリュウ親父役のチュウ・シュイと知的障害のある次男役のジャン・ウーが出色。脇を固める風呂屋の客人たちも個性的で笑える。脇役にもそれぞれエピソードを作り、ちゃんとそれに結末をつけられているので、みんなに感情移入できる。ほんわかしたムードにながされがちだけど、この監督かなり完全主義者では無いだろうか?

シャンペイ地方の挿話がちょっと本筋から浮いてる感じがしたのが残念。若い女性がでてくるので一瞬「初恋のきた道」かと思った。あのへんがしっくり来てればもっとよかった。

ラストも変に涙モノに走らず、潔い。期待通り心がとっても和んだ秀作でした。




                  
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